企業の利益は、売上から経費を差し引いたもの。つまり経費削減は、売上を増やすことと同じくらい大切だといえるでしょう。しかし、経営者にとって、問題点は見つけにくいものでもあります。今回は、社内で改善できる問題点を探す方法をご紹介しましょう。
ヒアリング
無駄な作業や非効率な業務があれば、それをよく分かっているのは現場の人間だといえます。そのため、問題点を探るのに効果的な方法のひとつが、現場で働く従業員へのヒアリングです。ヒアリングの方法としては、以下のようなものがあります。
- 集団面談
直接顔を合わせ、言葉を通じて意見を聞くのが面談です。面談は現場の従業員の「生の声」を聞くことができるため、現場の状況をより正確に把握することが可能。面談には集団面談と個人面談がありますが、集団面談は会議のように複数人と同時に面談する手法です。メリットは、個人面談に比べて短時間でより多くの人と面談ができることと、一人では言い出しにくい意見が出やすいことです。
- 個人面談
時間的はかかりますが、個人面談では一人ひとりからじっくり意見を聞くことができます。集団面談では空気を読んで同意していても、じつは個人的には正反対の意見だった……ということもあるでしょう。そのため、同じグループの人には聞かれたくない意見が聞ける可能性が高いといえます。集団面談と個人面談は、上手に使い分けてください。
- アンケート
狭義でのヒアリングとは異なりますが、アンケートも従業員から意見を募るための方法のひとつです。アンケート調査は面談に比べ、短時間でより多くの人員から意見を集約することができます。ただ、選択式の場合は用意した答えのうち、どの答えが多くどの答えが少ないのかということしか分かりません。記述式の場合でも、面談に比べると表面的な意見しか出てこないことも多いでしょう。それぞれにメリットとデメリットがあるため、アンケートもあわせて適切に活用する必要があります。
経費データの統計
従業員へのヒアリングの他に、経費が何にいくら使われていたのかを統計し、現状を把握することも大切です。そして統計後、「昔に比べて増えた経費」や「他社に比べて多い経費」などに着目してみましょう。もちろん比較を行うためには、過去の統計データや他社のデータが必要です。多くのデータがなければ正確な統計は得られなので、多くのデータを用意する必要があります。正確に現状を把握するためには少なくとも過去1年分程のデータが必要です。
統計には統計でしか分からない現状が見えてくる
ヒアリングが従業員単位で見る「ミクロのデータ」だとすれば、統計は会社全体を俯瞰する「マクロのデータ」です。残業時間といった数字の推移は、従業員がなんとなく肌で感じることはあっても、具体的にどれくらい増減したのかまでははっきり分かりません。また、比較することではじめて気づくこともあります。このように統計は、統計でしか分からない現状が見えてくるのが特徴です。
なぜなぜ分析
なぜなぜ分析とは、問題の原因を深掘りしていくことで問題の根源を探る手法です。問題解決手法として「なぜなぜ分析」はとても有効ですので試してみてください。
原因の原因を探っていく
例えば、統計により「コストがかさんでいる経費」を見つけたとしましょう。次は、その経費が具体的になんの経費かを探ります。かさんでいる経費が人件費だとして、それを突き詰めると「営業部の残業代」だということが分かりました。では、なぜ残業が増えたのかを調査すると、「ノルマが厳しすぎるから」というような原因が見えてきます。さらにそこから探ってみると、「新しく就任した部長が成果を上げるために以前より厳しくしていた」というような背景が見えてくる、というような流れです。そこまで把握できれば、その部長にノルマを以前の水準に戻すよう命令すれば改善できるかもしれませんね。このように、原因の原因をどんどん探っていくことで、改善できそうな問題点を見つける手法が「なぜなぜ分析」です。
システム化
業務のスピードアップや無駄の削減は、「システム化」により解決できるかもしれません。「生産管理システム」「購買管理システム」「勤怠管理システム」など、企業向けの基幹システムは豊富にあります。手作業で非効率だと感じている業務や、人員が足りていないと感じる業務があるなら、ぜひ一度システム化を検討してみてください。また、経費精算や購買データのシステム化は、会計報告に必要な集計も自動的に行ってくれます。先ほど紹介した分析のための統計も、システムを使えば時間がかかりません。
業務改善作業は「繰り返し」
1度の分析と改善で大幅に経費が削減される成功事例は少ないといえます。実際には、試行錯誤を繰り返しながら徐々に改善していくことになるでしょう。また、業務が追加されたり、人員が入れ替わったりすれば、新たに問題点が発生するものです。改善されたからといって安心せず、定期的に業務効率の確認と見直しを繰り返すようにしましょう。