営業職のような職種で導入することの多い給与システムである「みなし残業」。36協定を無視した労働を強いる企業がこの制度を持ちだしてきたりすることもあり、実は求職者にとってあまりイメージがよくありません。この記事ではみなし残業制での求人募集の際に気をつけておきたいことを紹介します。
「残業代が出ない」というイメージを持たれがちなみなし残業
近年、頻繁にメディアにも取り上げられるのが労働環境の問題です。過剰な残業やずさんな管理体制、そして時には人権さえないがしろにされることもあり、その結果心身の健康を損なうというのは日本において重大な社会問題となっています。
そうした過酷な労働を強いる企業はブラック企業として摘発されるべき運命にあることは言うまでもありませんが、その反面、「ブラック企業」という言葉が一人歩きしている傾向にあることにも人事採用担当者は注意しておくべきでしょう。
求職者目線で見ると、最近はプライベートの充実を重視し、オンオフきっちり分けて仕事ができる働き方が人気です。そのため、求人広告では「こんな仕事がしたい」と思われるようなポジティブな魅力を伝えることも重要になっています。加えて、求職者の「この会社は大丈夫?」「ブラック企業では?」という疑問を払拭するディフェンスも大切です。
特に求職者からの人気が低く、求人広告を出稿する際に注意したいのが「みなし残業」です。みなし残業は「残業代をあらかじめ給与に組み込んでおく」という「固定残業代」というシステムなのですが、これは「残業代が出ない」「企業側からすれば残業させ放題」などの印象を持つ方も多く、成果主義的な風潮を苦手とする求職者からは「ノルマがきつそう」といったイメージを持たれることもあります。
そこで以下では、誤解を受けないために「みなし残業」を求人広告で扱う場合のポイントを紹介します。
何時間分の残業代が給料に含まれているのかを明記
求人広告で重要なことは、「求職者に正しい情報をありのままに伝える」ことです。これはみなし残業を扱うときに限らず、どんな募集においても求職者の信頼を勝ち取るために不可欠なことであるため、「なんとかごまかそう」や「言いたくないことはできるだけ隠そう」という考えをまず捨てましょう。
みなし残業制の職種の募集で絶対に忘れてはならないのが、「月何時間分の残業代が月給に組み込まれているのか」の明記です。これはいわゆる36協定にも関係してくることで、労働基準法では特例を除いて月45時間以上の残業を禁じています。そのため、みなし残業による固定残業代は何時間分でいくらなのかを明記することが必要です。
近年、特に大手求人広告メーカーではこの表記がなければ「掲載不可」とするケースも増えています。みなし残業時間の表記で多いのは、月20〜40時間といったところです。また、「みなし残業で想定している残業時間を超過した場合は、追加で残業代を支払わなければならない」ということにも注意しましょう。この場合、すみやかに支払いに応じなければ訴訟に発展するケースもあります。
このように、特殊な給与システムで募集を行う際には、事前に労働環境をしっかりと整えておくことも必要なのです。
営業職はインセンティブをしっかりとアピール!
みなし残業を導入している事例が多い職種は「営業職」です。会社の利益を直接生みだすこの職種は、売り上げ成績という定量的な評価基準があるために、労働時間以上に労働の「質」に目を向けた雇用方法を採用している企業が多くあります。
しかし、多くの会社の営業職の月給(=基本給+固定残業代)は、みなし残業ではないほかの職種とあまり変わらないケースがほとんどです。
みなし残業のブラックなイメージ、つまり「残業代が出ない」という誤った認識のされ方は、このことがひとつの原因とも考えられます。そのイメージを払拭するために重要なのが、労働の質を評価するインセンティブをしっかりアピールすることです。
インセンティブ制度の充実は営業職に対する敬意の表れとなります。これをできるだけ具体的に想像させる情報を惜しみなく出すことを心がけましょう。成果基準を定量的に書き、高額インセンティブは支給例だけでなく達成事項も具体的に書きましょう。可能であれば、達成した社員の社歴や経験なども紹介できればなおよいです。
また、ここで忘れがちな情報は「扱う商材」についてです。「売りやすさ(=達成難易度)」を想像するうえで極めて重要な項目であるため、手を抜かずにきちんと説明しましょう。
誤解を受けない求人広告を作るために
みなし残業とも呼ばれる固定残業代システムは求職者からのイメージは悪いですが、だからこそ求人広告で書くべきことは必然的に決まってきます。イメージ払拭のためには何時間の残業が想定され、どのようなインセンティブ制度を設けているのかという具体的な社内制度をきちんと説明することが何よりも大切です。
求人広告の効果を左右するのは「誠実さ」です。あらぬ誤解を受けないためにも、細部まで具体的な記述を心がけ、求職者が「この会社で働いている自分」を想像できるように配慮しましょう。