IT分野やベンチャー企業の台頭、そして働き方の多様化に伴い、多くの企業の職場環境は雑然とデスクが並ぶ従来型の「事務所」から、おしゃれで機能的な「オフィス」へと変貌を遂げつつあります。
最先端を走る企業であるGoogleやApple、Microsoftなどのスタイリッシュで機能的なオフィスは、従業員のモチベーションを上げるだけではなく、企業ブランドや理念、コーポレートイメージを反映することから、多くの企業におけるオフィス作りの見本となっています。
とはいえ、「自社もこんなオフィスにしたい」という理想はあるものの、どこから手を付けてよいかわからないといった企業も多いのではないでしょうか? 今回は、理想のオフィスに仕上げるためのデザインや内装の進め方、工事業者やデザイナーなどのプロに伝えるべきこと、そして社内調整に欠かせないこととは何かをご紹介します。
理想のオフィスデザインや内装を実現するための進め方とは?
理想のオフィスにするためには、どのような手順で行うとよいのでしょうか? 進め方を詳しく見ていきましょう。
どのようなレイアウトにするか決める
代表的なデスクのレイアウトには以下5つの型があります。
- チームごとにデスクを対面させる「島型」
- 空いている席を選んで仕事をする「フリーアドレス型」
- 学校やコールセンターで利用される「スクール型」
- デスクをパーテーションで囲んだ「ブース型」
- デスクを背中合わせにした「背面対向型」
一番無難なレイアウトは「島型」ですが、従業員の外出が多い企業やIT企業では「フリーアドレス型」が人気です。また、他人の視線を気にせずに没頭できる「ブース型」は研究職やクリエイティブな職種に適しており、チームで仕事を行うことが多い業種では、すぐに打ち合わせができる「背面対向型」がよいでしょう。
このように仕事の形態や職種によって、適したレイアウトは異なります。自社にはどのレイアウトが適しているのかを見極めて選択をしましょう。
オフィスのデザインや内装の基本コンセプトを決める
オフィスのデザインや内装の基本コンセプトは、企業理念やイメージを伝える重要な鍵となり、ここを外してしまうと残念な結果になります。
例えば、子供向け商品を販売する会社が、オフィスを硬めのシャープなデザインに変更した場合は親しみが薄れてしまう可能性がありますし、法律事務所がポップなデザインの場合は信頼感が薄れる可能性があります。
企業理念やコンセプトを念頭に、オフィスのデザインや内装を決定していきましょう。
工事業者やデザイナーへの依頼範囲を決める
オフィスデザインや内装を変える場合、どこまで工事業者やデザイナーに依頼するかを決める必要があります。例えば、半個室タイプのデスクレイアウトや、ミーティングスペースを設けたいなど、現オフィス内部において明確に内装やデザインを変更したい箇所がある場合や、内装工事の予算を抑えたい場合は、内装やデザインの提案だけを依頼することもできます。しかしその場合、内装やデザインの提案を受けたとしても、その後の内装工事やオフィス家具の入れ替えなど、多くの作業が発生するため従業員の負担が重くなることも念頭に入れる必要があります。そのため、従業員の負担を省きつつ、雑誌に出てくる魅力的なオフィスのようにデザイン変更をしたい場合は、レイアウトから工事までをプロに一括依頼する、という方法がおすすめです。
まずは自社の依頼範囲はどこまでかを今一度、考えてみましょう。
依頼範囲によって生じるメリット・デメリットとは?
オフィスデザインや内装を工事業者やデザイナーに依頼する際、提案だけ依頼する場合と一括依頼する場合では、それぞれどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
内装やデザインなどの提案だけを依頼する場合
内装やオフィスデザインの提案だけを依頼するメリットは、プロの提案するハイセンスな内装やオフィスデザインを取り入れることができる点が挙げられます。また、提案を受けたうえでの簡単な内装変更はDIYで対応し、内装費を安価に抑えることができるため、予算が厳しい会社も変更可能です。
一方デメリットとしては、電源工事や大規模な壁や床の張替えなどが生じた場合、別途工事業者を手配する必要がある点が挙げられます。また、通常の従業員は内装工事に関しては素人のため、業者への依頼漏れなど想定外の支出が生じて内装費予算がオーバーする可能性や、DIYの不備などで後に問題が発覚する可能性があります。また、内装やオフィス家具の手配なども自力で行うため、なかなかプロの提案通りにはいかない可能性があります。
レイアウトから工事まですべて依頼する場合
レイアウトから工事まですべてを依頼する場合のメリットは、依頼業者の1社とだけ相談しながら進めればよいため、別々の業者に一つひとつ依頼するより従業員に時間的な余裕が生まれ、本業に集中することができることが挙げられます。また一括依頼は、複数業者に個別依頼するより総額が割安となるうえ、依頼漏れによる追加費用の心配がなく、予算内に収めることができます。
さらに、一括依頼は業者と相談したデザイン通りに施工され、ハイクオリティなオフィスになり、従業員満足度やモチベーションも上がる効果が期待できます。
一方、デメリットは費用がかさむ点が挙げられますが、総額を計算すると割高になるとも限りません。ある程度予算が確保できる場合は、一括依頼がおすすめといえます。
工事業者やデザイナーに伝えるべきこととは?
工事業者やデザイナーなどのプロに依頼すると決めた場合でも、オフィスの内装やデザインの希望を丸投げするだけでは、当然理想のオフィスにはなりません。
理想のオフィスを実現するために、工事業者やデザイナーには、一体どのようなことを伝えればよいのでしょうか。
企業理念やコンセプト
企業理念やコンセプトを伝えることは、理想のオフィスに関する具体的な内装やデザインを伝える以上に重要です。伝え忘れると、コストを掛けてプロにお願いしても、社風や企業理念に合わない的外れなオフィスになってしまいます。まずは、企業理念やコンセプトを丁寧に工事業者やデザイナーに伝え、自社に合ったデザイン設計を依頼してみましょう。
理想とするオフィスのデザインや内装のイメージ
現在のオフィス図面や従業員数、坪数などの基本情報や現状のオフィスの悩み、そして理想とするオフィスのデザインや内装のイメージを具体的に伝えましょう。例えば、座席を決めない「フリーアドレス型」レイアウトを取りつつ、白と黒を基調とした近未来的なイメージのオフィスにしたい、あるいはアンティーク調の家具を多用した重厚感と高級感の溢れるデザインにしたいなど、具体的なイメージを伝えることです。
コストの許容範囲
オフィスの内装やデザインは、凝れば凝るほどコストが掛かります。最初にコストの許容範囲を伝えておくことで、予算オーバーになるリスクを抑えることができます。また、自社ビルではない場合、オフィスを移転する際の原状回復コストも視野に入れた見積もりを取っておくことも大切です。
オフィスのデザインや内装レイアウト提出期限や工事希望日
工事業者やデザイナーに投げっぱなしで、いつレイアウト案や見積もりが出るのかわからないようでは困ります。デザイナーにはレイアウトの提出期限を設け、工事業者には工事希望日に工事が可能かどうかを必ず確認するようにしましょう。
社内との調整で欠かせないこととは?
企業の重要決定をトップダウンで行う傾向にある企業の場合、つい社内調整を疎かにしてしまい、どんなに素晴らしい提案でも、残念ながら従業員の理解や協力を得にくいことがあるようです。社内調整に欠かせない点とはどのようなものがあるのでしょう?
オフィスの内装変更の日程に配慮する
大規模なオフィスの内装変更やデザイン変更の場合、電源工事やオフィス家具の運搬、内装工事などのため、通常業務を中止しなければなりません。さらに、オフィス環境を通常業務可能な状態に戻すまでの時間を考慮した場合、決算期のような業務上多忙な時期は避ける必要があります。また、小規模な変更であっても、現場では客先との打ち合わせや納期など都合が悪い日程があるものです。
オフィスの内装やデザインを変更する日程を決める際は、必ず現場の声を聴取し、問題のない日程にしましょう。
従業員にオフィスの内装やデザインを変更する旨の事前説明会を開く
オフィスの内装やデザインを変更する目的や意義、変更の度合いや具体的な日程などの事前説明会を開催することで、変更に対する共通認識を持つことができます。また、この一大プロジェクトを通じて、組織としての一体感が強まる効果もあります。
従業員にオフィスの内装やデザイン案を聞き、問題がある場合は修正する
オフィスの内装やデザイン案に対し、従業員の率直な感想や意見を聞くことも大切です。オフィスデザインに対する意見や提案、使い勝手の悪いオフィス家具の配置変更希望など、現場ではさまざまな要望や意見が出るものです。もちろん、従業員の意見をすべて取り入れることは難しいですが、意見を取り入れつつ修正を加えることで、より従業員満足度の高いオフィスの内装やデザインになります。
従業員一丸となって理想のオフィスを作り上げよう
オフィスの内装やデザインを変更することは、1日の大半を過ごす従業員にとっても重要事項であり、従業員の協力や理解なくしては理想のオフィスは実現しません。理想のオフィスにするために、時にはプロの力を借りながら従業員一丸となって動きましょう。
参考: